東京地方裁判所 平成6年(行ウ)185号 判決 1995年1月26日
主文
一 本件訴えをいずれも却下する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
理由
第一 原告らの請求
被告建設大臣及び被告運輸大臣が、平成六年九月二〇日に、日本道路公団の同年四月二六日付けの高速自動車国道の料金及び料金徴収期間の変更申請を認可した処分を取り消す。
第二 事案の概要
本件は、日本道路公団(以下「公団」という。)が、平成六年四月二六日にした高速自動車国道の料金及び料金徴収期間の変更申請(以下「本件申請」という。)につき、被告建設大臣(以下「建設大臣」という。)及び被告運輸大臣(以下「運輸大臣」という。)が、同年九月二〇日に、それぞれこれに対する認可をした(以下、それぞれ「本件認可」といい、又はこれを合わせて「本件各認可」という。)ところ、運送業者である原告らが、本件各認可が違法であるとして、その取消しを求めている事案である。
一 原告らの本件各認可の違法性等についての主張
1 原告らは、いわゆる東名高速道路及び名神高速道路の沿線にその本拠を置く運送業者であり、右道路を利用している者であるが、公団は、平成六年四月二六日、道路整備特別措置法(以下「特措法」という。)二条の四の規定に基づいて別紙二「認可申請の概要」の申請欄記載のとおりの本件申請を行い、建設大臣及び運輸大臣は、同年九月二〇日、料金の値上げ幅を抑えるなどした上、別紙二「認可申請の概要」の認可欄記載のとおりの本件各認可を行つた。
2 公団は、道路無料公開の原則に対する例外として、特措法によつて高速自動車国道の料金を徴収できるものとされているが、特措法一一条一項は、公団が徴収することのできる料金の額は、高速自動車国道の新設、改築その他の管理に関する費用で政令で定めるものを償うものであり(償還主義)、かつ、公正妥当なものでなければならない(公正妥当主義)旨定めている。
本件申請は、以下のとおり、償還主義を不当に拡張して適用し、また、いわゆる料金プール制の不公平な運用によつて、地域的、時間的な不平等を招来し、公正妥当主義に反する結果をもたらすものであり、これを認可した本件各認可は違法である。
3 本件申請は、第二東名高速自動車国道の建設の認可に伴つて、その建設費を賄うことを料金の値上げ申請理由のひとつとしている。しかしながら、建設に着手さえしていない高速自動車国道の建設費を償還の対象となる経費に含めることは、本来次世代が担うべき道路の建設費を現実には右道路を利用することができない現在の利用者に負担させるものであり、違法というべきである。
また、公団は、従来から高速自動車国道の道路用地取得費を償還対象費用に含ませて料金を決定する方式をとり、本件申請に当たつても、第二東名高速自動車国道の建設費中に用地取得費を含めて、変更後の料金額を算定している。しかしながら、道路用地は償却されるものではなく、償還期間内の道路用地の賃料相当額を償還対象とすることはともかく、道路用地の取得費そのものは国の一般財源によつて賄われるべきものであるから、用地取得費を含めて料金額を定めることは、償還主義の違法な拡張である。
したがつて、このような本件申請を認可した本件各認可は違法である。
4 いわゆる料金プール制とは、高速自動車国道の各路線の料金収入を全国的にプールして、これをもつて高速自動車国道の新設、維持管理等の費用を賄うことにし、利用料金についても画一料金とする方法であるが、公団が、路線別の採算を無視してプール制をとつていることにより、償還主義の下においては、東名高速道路等のように単一路線としては既に償還を終えようとし維持管理費の安くなつている路線の利用者も、当該路線の経年変化に伴う劣化や交通量増大による交通渋滞等のサービスの悪化があるにもかかわらず、快適なサービスを享受している不採算路線の利用者と同様の画一料金を負担させられる不公平な結果となつている。特措法一一条等は右料金プール制を採用しているものとみられるが、料金プール制の以上のような結果からすれば、その運用には一定の制約があるというべきであり、公団がそうした料金プール制の弊害につき何らの是正策をとることなく、画一料金制を維持したまま料金を値上げしようとする本件申請は、原告らのように東名高速道路等の採算路線の利用者に更に不公平な料金の支払を強いるものであり、これを認可した本件各認可は違法である。
二 争点
本件において、被告らは、本件各認可は取消訴訟の対象となる行政処分に当たらないとして、本件訴えの却下を求めており、本件各認可の処分性の有無が争われているところ、この点に関する当事者双方の主張の要旨は、次のとおりである。
1 原告らの主張
(一) 公団による本件申請に対する本件各認可は、自動的に公団による料金等の改定に結び付き、公団の高速自動車国道に対する独占的地位、交通施設における高速自動車国道の基幹的地位のため、原告らのような運送業者等の高速自動車国道利用者が、不可避的に公団の定めた料金を支払わなければならないという外部的効果を直接に生じさせるもので、国民の義務の範囲を確定する効力を有するから、行政事件訴訟法三条二項の行政処分に当たるというべきである。
(二) 被告らは、本件各認可は、上級行政庁である被告らが、下級行政庁である公団に対してなす承諾としての性格を有するものであり、行政機関相互間の内部的行為と同視すべきものであると主張する。
しかしながら、公団は、日本道路公団法(以下「公団法」という。)により独立の法人格を付与されており、公団の管理、運営は公団の役員が行うこととされ、この役員は政府職員が兼任することを禁じられ、公団の職員は総裁が任命する等、公団の運営については、政府からの自律性が確保されており、国とは別個独立の法主体である。そして、公団に特別の法人格を付与し、一定の業務を遂行させることとしている以上、それが行政主体たる性質を有するか否かにかかわりなく、国と公団との関係は法律関係として把握されるものである。
右のとおり、公団は、国とは別個独立の法人であり、独立の法主体として、高速自動車国道を建設し、維持、管理を行うものであるところ、本件各認可は、これにより、公団に一定水準の料金徴収権限という経済的利益を付与する効果をもつものであり、その文言からしても、講学上の認可であるというべきである。すなわち、本件各認可は、私有鉄道の料金変更に対する地方鉄道法二一条の運輸大臣の認可、一般自動車運送業者のなすタクシーやバスの料金変更に対する道路運送法八条の運輸大臣の認可等と同様の性格を有するものであり、公共的料金をできる限り低廉なものにとどめる趣旨でなされる右認可等と同様の趣旨に基づくものである。そして、公団が行政主体としての属性を有するとしても、公団は独立の法主体として経済活動を行うものであり、公団は、本件各認可の有無により、一定水準の料金徴収権限という経済的利益を侵害され、あるいは、これを付与されるということになり、公団が独立の法主体として行う経済活動の中心である料金徴収権限を左右されることになるのであるから、料金変更との関係においては、公団と被告らとは行政機関としての上下関係ではなく、民間事業者と国との関係と同様、対立関係にあるというべきである。したがつて、その申請に対する認可がなされなかつた場合には、これに対する不服申立てができるものというべきであるから、本件各認可が公団との関係においても行政処分性を有することは明らかである。
2 被告らの主張
抗告訴訟である取消訴訟の対象となる行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為(行政事件訴訟法三条二項)とは、行政庁の行為のうち、行政庁が法令に基づき、優越的立場において直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する行為をいうものと解されるところ、本件各認可は、以下のとおり、いずれも取消訴訟の対象となる行政処分に該当しない。
(一) 建設大臣の認可の処分性
公団は、有料道路の新設、改築、維持、修繕その他の管理を総合的かつ効率的に行うこと等によつて道路整備を促進し、円滑な交通に寄与することを目的として設立された公法人であるが(公団法一条、二条)、建設大臣は、公団に対し、次のような広範な監督権限を有している。すなわち、建設大臣は、公団法三四条により、公団の業務一般について監督を行い、必要な命令をすることができるほか、同法一〇条、一三条により、役員の任免等を行い、同法四条二項、二〇条、二二条、二四条、二六条、二九条により、資本金の増額の認可、業務方法書の認可、毎事業年度の予算、事業計画及び資金計画の認可、財務諸表の承認、借入金等や償還計画の認可等を行うものとされている。さらに、特措法二条の二、二条の三、二条の四、三条によれば、建設大臣は、公団をして高速自動車国道の新設又は改築をさせ、料金を徴収させることができ、公団の右道路の新設又は改築に当たつて、工事実施計画書の認可を行い、公団が右新設又は改築に係る道路について料金を徴収し、又は変更しようとするときにも、料金及びその徴収期間について認可を行い、公団が有料の一般国道等を新設、改築して料金の徴収を行うときも、許可を行うものとしている。
一方、同法六条の二によつて、公団には、高速自動車国道を新設する場合等において、建設大臣の有する権限の一部を代行することが認められている。
右のような法律の規定に照らせば、公団は形式的には、国と独立した法人であるものの、実質的には、広い意味で国家行政組織の一環をなす政府関係機関であり、建設大臣と公団とは、公団の事業遂行等に関し、上級行政機関と下級行政機関の関係にあるものというべきである。加えて、本件認可に係る料金は、公団が料金の額及び徴収期間を官報で公告し(特措法一四条)、個々の利用者が現実に高速自動車国道を通行することによつて徴収されることになる(同法一二条)ものであるから、本件認可によつて直接に国民の権利義務に変動が生じるものではない。
したがつて、建設大臣の本件認可は、公団の行う高速自動車国道の料金及びその徴収期間の変更につき、実質的な上級行政機関が行う監督手段としての承認の性質を有するものであり、行政機関相互間の内部的行為と同視すべきものであるから、取消訴訟の対象となる行政処分に当たらないというべきである。
(二) 運輸大臣の認可の処分性
運輸大臣は、建設大臣とともに、高速自動車国道の料金及びその徴収期間につき認可を行い(特措法二条の四)、高速自動車国道として建設すべき道路の予定路線を定め、政令で高速自動車国道の路線を指定し、指定した路線につきその整備計画の策定及び変更を行う(高速自動車国道法三条、四条、五条)ほか、特措法三条一項又は二項に基づき、公団が徴収する料金につき建設大臣がその許可をするに際して、建設大臣には、あらかじめ運輸大臣と協議し又はその意見を聴くことが義務付けられている。
これらの諸規定は、高速自動車国道等が基幹的な交通施設であり、これに関する右のような事項が運輸行政と密接に関連することから、運輸大臣をその決定等に関与させ、総合的かつ効率的な施策を行うこととしたことによるものである。
これらの諸規定や前記のとおり公団が広い意味で国家行政組織の一部をなす一種の政府関係機関であることからすれば、運輸大臣と公団とは、本件認可等に関し、実質的には、上級行政機関と下級行政機関の関係に立つものというべきであり、運輸大臣の本件認可は、高速自動車国道の料金及びその徴収期間が、並行する鉄道の利用者や高速自動車国道を利用するバス、トラック等に大きな影響を及ぼすなど、運輸行政の根幹にかかわる重要事項であることにかんがみて付与された権限であり、実質的な上級行政機関としての運輸大臣が法定の要件の具備等を審査する監督手段として行う承認としての性質を有するものというべきである。そして、本件認可によつて直接に国民の権利義務に変動が生じるものでないことは、前記のとおりであり、運輸大臣の本件認可も取消訴訟の対象となる行政処分に当たらないというべきである。
第三 争点に対する判断
一 本件においては、本件各認可が取消訴訟の対象となる行政処分(行政事件訴訟法三条二項)に当たるか否かが争われているところ、抗告訴訟の趣旨、目的等に照らせば、取消訴訟の対象となる行政処分とは、行政庁が法令に基づき、その優越的立場において、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する行為をいうものと解される。
二1 本件各認可は、いずれも公団に対してなされているものであるところ、公団に対する料金及び料金の徴収期間の認可がいかなる性質を有するかを検討するに当たつては、まず、公団の行う高速自動車国道等の新設、改築及び料金の徴収行為の性質、公団の組織法上の位置付けについて検討する必要がある。
2 高速自動車国道法は、運輸大臣及び建設大臣は、高速自動車国道として建設すべき道路の予定路線を定め(同法三条)、政令で高速自動車国道の路線を指定し(同法四条)、路線が指定されたときには、その整備計画の策定及び変更を行う(同法五条)としており、高速自動車国道の新設、改築、維持、修繕、災害復旧その他の管理は、建設大臣が行うもの(同法六条)としている。
特措法は、建設大臣は、高速自動車国道法六条の規定にかかわらず、公団をして同法五条に規定する整備計画に基づく高速自動車国道の新設又は改築を行わせ、料金を徴収することができる(特措法二条の二)とし、公団が、高速自動車国道を新設し、又は改築しようとするときは、工事実施計画書について、あらかじめ、建設大臣の認可を受けなければならず(同法二条の三)、公団が同法二条の二の規定に基づき新設し、又は改築した高速自動車国道について料金を徴収しようとするときは、料金及び料金の徴収期間について、あらかじめ、運輸大臣及び建設大臣の認可を受けなければならず、これを変更するときも同様とする(同法二条の四)としている。また、公団は、一般国道、都道府県道等について、建設大臣の許可を受けて、これを新設し、又は改築して、料金を徴収することができる(もつとも、右のような一般有料道路のうち、都道府県道等のように、当該道路の本来の管理者が都道府県等である場合には、当該道路の新設又は改築が国の利害に特に関係があると認められるものであるとき等に限られる。同法三条)とし、右規定に基づき公団が徴収する料金につき建設大臣が許可をする際には、建設大臣は、あらかじめ、運輸大臣と協議し又はその意見をきかなければならない(同法一三条)としている。そして、公団には、これら高速自動車国道又は一般有料道路につき、建設大臣又は道路管理者の有する一定の管理権限を代行すること(同法六条の二、七条)が認められている。
以上の規定からすれば、高速自動車国道等の新設、改築及び料金の徴収行為の性質は、本来、政策的な見地から主として建設大臣によつて行われる国の行政作用であり、公団の行う高速自動車国道等の新設、改築及び料金の徴収行為は、主として建設大臣の監督の下に国の行政機能の一部を代行するという性質を有するものというべきである。
3 また、公団法によれば、公団は、その通行又は利用について料金を徴収することができる道路の新設、改築、維持、修繕その他の管理を総合的にかつ効率的に行うこと等によつて、道路の整備を促進し、円滑な交通に寄与することを目的として設立された法人であり(同法一条、二条)、公団の資本金は政府が全額を出資し(同法四条、附則九条二項)、その総裁及び監事は、建設大臣が任命又は解任し、副総裁及び理事の任命又は解任につき、建設大臣がこれを認可する(同法一〇条、一三条)とされている。その業務については、業務一般につき、建設大臣の監督を受け、建設大臣が監督上必要な命令をすることができ、業務の状況の報告をさせ、立入検査を行うことができる(同法三四条、三五条)ほか、一定の業務を行い又は一定の業務を主目的とする事業への投資を行う場合には建設大臣の認可を受け、また、業務開始の際の業務方法書の作成、変更のときには、建設大臣の認可を受けること(同法一九条二項、一九条の二、二〇条)とされており、財務及び会計についても、毎事業年度の予算、事業計画及び資金計画について建設大臣の認可を受け、財務諸表について建設大臣の承認を受けなければならない(同法二二条、二四条)ほか、残余利益は積立金として整理しなければならず(同法二五条一項)、借入り、道路債券の発行及びその償還計画につき建設大臣の認可を受け(同法二六条、二九条)、また、政府は公団の道路債券に係る債務を保証することができる(同法二八条)とされている。さらに、不動産登記法及び政令で定めるその他の法令については、政令で定めるところにより、公団を国の行政機関とみなして、これらの法令を準用する(同法三九条の二)こととされている。
以上の規定からすれば、公団は、国とは別個の法主体として設立されながら、建設大臣等の広範な監督を受け、高速自動車国道等の新設、改築及び料金の徴収との関係においては、特措法ないし公団法上、国の行政機能の一部を代行する広い意味での国家行政組織の一環をなすものとして規定されているものと解することができる。
4 右2及び3で検討したところによれば、特措法二条の四に規定する運輸大臣及び建設大臣の認可は、国家行政組織上の上級機関に当たる建設大臣及び運輸大臣が、下級行政機関としての公団に対して行う監督手段としての承認の性質を有するものであり、行政機関相互間の内部的な行為と同視すべきものと解すべきである。
なお、前示のとおり、公団法及び特措法上、公団は、主として建設大臣の一般的な監督を受けるものとされていることから、運輸大臣との関係においても、下級行政機関として位置付けられ、運輸大臣の行う本件認可が上級行政機関の監督手段としての性質を有するものといえるか否かについて、問題となる。
しかし、公団は、国の行政作用として把握される高速自動車国道等の新設、改築及び料金の徴収行為を代行する広い意味での国家行政組織の一環をなすものであることは前記のとおりである上、前示した法の諸規定からすれば、高速自動車国道等が我が国の基幹的な交通施設であつて、その予定路線の決定、路線指定及びその整備計画の策定や高速自動車国道及び一般有料道路の新設、改築及び料金の徴収行為等が公共的な交通サービスの維持、整備を目的とする運輸行政に密接に関連するものであり、国の行政作用としては、建設大臣及び運輸大臣のそれぞれの所管に属する側面を有するものであるから、運輸大臣をその決定等に関与させ、各交通機関の特性とその連携を重視した総合的かつ効率的な施策を行うこととしたものと解することができる。そして、特措法二条の四に基づく高速自動車国道の料金及びその徴収期間につき、建設大臣とともに運輸大臣に認可権限を付与したのも、高速自動車国道の料金及びその徴収期間が、我が国の運輸行政の根幹にかかわる重要事項であることにかんがみ、運輸大臣の所管事項に関するものとされたことによるものと解される。そうすると、運輸大臣の本件認可もやはり実質的な上級行政機関としての監督手段として位置付けられているものというべきである。
三 加えて、高速自動車国道の料金は、公団が、特措法二条の四に基づく運輸大臣及び建設大臣の認可を得た上で、料金の額及び徴収期間を官報で公告し(特措法一四条一項)、個々の利用者が現実に高速自動車国道を通行することによつて、徴収されることになるものであり、運輸大臣及び建設大臣の認可自体によつて、高速自動車国道の利用者に対して、当該認可に係る料金の額及び徴収期間についての受忍義務が取消訴訟等の抗告訴訟によらなければ争い得ないような効力を伴つて課されることになることをうかがわせるような規定は、特措法及びその他の関係法令上存在していない。
したがつて、本件各認可は、当該高速自動車国道の利用者との関係においても、直接その権利義務を形成し、又はその範囲を確定するような効果を伴うものではないというべきである。
四 以上によれば、本件各認可は、行政機関相互間の内部的な行為と同視すべきものであり、それ自体として、外部に効力を有するものではなく、それによつて、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定するような効果を伴うものではないから、取消訴訟の対象となる行政処分には当たらないというべきである。
五 これに対し、原告らは、公団は、国とは別個独立の法人格を付与され、独立の法主体として、高速自動車国道を建設し、維持、管理を行うものであり、本件各認可により、公団に一定水準の料金徴収権限という経済的利益を付与する効果をもつものであるから、料金変更との関係では被告らとは行政機関としての上下関係ではなく、対立関係にあるというべきであり、また、公団は、その申請に対する認可がなされなかつた場合にはこれに対する不服申立てができるから、本件各認可は行政処分性を有する講学上の認可に当たる旨主張する。
しかしながら、公団が形式上独立の法人格を有するとしても、公法上の法人と行政機関との関係は実質的に判断すべきものであり、前記のとおり、公団が、高速自動車国道の新設、改築及び料金の徴収行為に関して、実質的に国の行政作用の代行機関としての地位、性質を有し、実質的に国家行政組織の一環をなす存在とみられる以上、公団の行う高速自動車国道の料金変更申請を、私有鉄道やタクシー、バス等の事業を行う民間事業者が国の行政作用の代行とはいい難い事業を行うに当たつてする料金変更申請等と同視して、料金変更に関する国と公団との関係を、国と民間事業者との対立関係と同様のものとみることはできないというべきであり、本件各認可は、やはり、行政機関相互間の行為と同視すべきものであるから、原告らの右主張は採用できないといわざるを得ない(なお、本件各認可の性質がそのようなものである以上、公団の申請に対して認可を拒否する行為もまた建設大臣及び運輸大臣の監督手段としての性質を有する行政機関相互間の行為と同視すべきものであり、公団はその行為に対して取消訴訟を提起できないというべきである。)。
六 したがつて、原告らの本件各訴えは、取消訴訟の対象とはならない行政庁の行為を対象とするものであり、その余の点について判断するまでもなく、不適法なものといわざるを得ないから、これをいずれも却下することとする。
(裁判長裁判官 秋山寿延 裁判官 竹田光広 裁判官 森田浩美)